私を振りまわすただ一人の男
ここまでくるのになんて時間がかかったんだろう。
そんなに難しいことなんだろうか。
ああ、こんなに難しいことだったのだ。
自分の時間を作るのが、こんなにも難しいことだったのだ。
ただひたすら、
静かに、静かに。
電話も声を潜めて、会話も最小限。
TVのボリュームも小さめに。
足音も立てず、クシャミも咳もできれば出さないで。
外の車の音も、ドキッとしてしまう。
夜9:30以降なら照明も暗めにする。
とにかく、
ようやく寝ついた息子を起こさないように!
これからようやく自分の時間。
でも音を立てるようなこともできない。
台所で料理をするのも気を遣う。
たったこれくらいの音で、向こうから
「ウンギャ~」
と言われると、トホホ、、、という気分になる。
せっかく寝てくれたのに。
息子の寝顔をチラチラ確認しながら、久しぶりにPCを起動させる。
本当に、ここまでくるのに、何日かかったことか。
やらなきゃいけないことが他にもあるけど、今くらい自由にさせてー!
音に気付いたり、抱っこしていたのを降ろして起きて泣くのじゃなく、
自然に起きて目を閉じたまま泣きそうな顔になる、それがとてもかわいい。
もう息子中心の生活。
家の中に引きこもり、息子と二人きりの時間。
すごく幸せな時間だけど、いい時もあれば大変な時もある。
「ちょっと待っとって」
も
「すぐ来るけんね」
も息子にはまだわからない。
息子の世界にはその時は私しかいない。
なので、すぐに泣き出してしまうこともある。
そういえば私の白い相棒も昔、買い物のおともに連れて行って、店の外につないだ。
「すぐ戻るけん、お利口さんして待っとって」
と言い聞かせ、背中を見せた瞬間からギャンギャン鳴き出した。
まるで、
「僕も行く!僕も行ける!置いていかんどって!!!!」
と言ってるようだった。
用事を済ませて戻ったら、尻尾をぶんぶん振り、喜びすぎて遠吠えをする。
息子もこんな気持ちなんだろう、きっと。
だから眠っている間に、こっそりとやらねばならないことをしてしまいたいのだ。
あれもこれも、やりたいこと全部はできないし、何をすればいいのか思い浮かばなくもなる。
明日もこんな時間が取れるという保障はない。
あ、息子がウジャウジャと言い始めた!